女王返り咲き! GIBBON NIPPON OPEN2017総括


文:FREEFALL編集部 高須基一朗

日本オープン前に本コラムで言及したが、

やはり勝負の世界に絶対は無いという格言がある通り、 

下馬評を覆す結果が次から次へ起こる

決勝ラウンド最終日となった。 

最終結果は以下の通りだ。

●オープン男子 

優勝 Pedro Rafael Marques 

準優勝 早坂 航太 

3位 木下 晴稀 

4位 田中 輝登 

5位 細江 樹 

6位 大杉 徹 

7位 Jaan Roose 

8位 石田 創真 

9位 松本 礼 

10位 林 映心 

11位 平塚 健生 

12位 高科 英一 

13位 竹部 叶大 

14位 波多野 雄哉 

不戦敗 名執 光星 

不戦敗 Alex Mason 


●オープン女子 

優勝 福田 恭巳 

準優勝 Giovanna Petrucci 

3位 岡田 亜佑美 

4位 須藤 美青 

5位 佐々木 優 

6位 田中 咲希 

7位 佐々木 燈 

8位 大西 美雪 

9位 松本 美紀 


●マスター 部門

優勝 竹中 一朗 

準優勝 田中 健雄 

3位 中村 学 

4位 新井 正城 


●ジュニア男子 

優勝 中村 陸人 

準優勝 田中 健介
3位 栗林 憧羽
4位 大戸 元気
5位 大沼 宙樹
6位 大沼 颯仁


ジュニア女子 

優勝 竹部 茉桜(まお)

準優勝 舛岡 心音
3位 山森 さほ
4位 舛岡 蓮凪


ジュニア部門は
男子は中村陸人選手が優勝。
女子は竹部栞桜選手が優勝。

優勝候補筆頭がしっかりとチカラ差を見せつけた。 

男女ともにSLACKLINE INDUSTRIES(以下、SI)サポートライダーであり、

ジュニア部門ではSIライダーが勢いがある印象を植え付けた。

マスター部門は、蓋を空けてみれば決勝戦で竹中一朗選手が安定した演技で、1人独壇場となり田中選手を圧倒して優勝。 

竹中選手の日本オープンまでに仕上げてきたトリックライン技術は完ぺきであった。

また15秒ごとに刻んで、2分間を使う戦術も試合巧者。 

後半に疲れを残さず余力を残して、ペース配分までも考え抜いていたのも印象的だった。 

決勝戦が終わった段階で、15秒ごとに時間を区切るのは作戦であったのかを竹中氏本人に質問を投げてみたところ、予想通りに、

40代という年齢での挑戦と 

過去の日本オープンでの一人当たり30秒の持ち時間の予選を経験しての疲れ具合を教訓に、 

15秒あたりを目安に休みを入れるCOMBOをベースに刻む戦いを考えていたようだ。 

準備に余念がなかったことが勝利を盤石なものに引き寄せていた。 

35歳以上限定のマスタークラスへ

今後出場する予定の選手たちは、この15秒の使い方というのは模範にしてもよいと思う。 


ジュニア部門に、マスター部門は少数招待制度だったために、アンダートーナメントは開催されず

順位確定マッチが用意された。 

ジュニア男子には、

5位or6位をかけた順位決定戦で、
大沼兄弟が闘志むき出しで対決。 

弟である大沼宙樹選手が接戦の末に兄に勝利。

兄・颯仁からしたら非常に悔しい結果となったことだろう。

この敗戦をバネにしてトリックライン技術を伸ばし、次回の兄弟対決が実現した際には、

兄の威厳を見せて宙樹選手を打ち破る姿も見てみたい。

3位or4位の順位決定試合では、
大戸元気選手と栗林憧羽選手が対戦。

スラックライン歴が少しばかり長い栗林憧羽Z(とわ)選手が勝利。

日本スラックラインの未来は、更に世界で通用するライダーが育っていくことを予感させるほどに

子供たちにレベルが非常に上がっていることを感じるジュニア男子部門であった。

ジュニア女子では、

初戦ベスト4で敗退してしまった 

山森さほ選手と舛岡蓮凪選手が3位決定戦へ。 

勝ちを手繰り寄せる決め手となったのは、
バックサイドフリーフォールとアセンションのコンビネーション2COMBO。 

完ぺきにメイクした北海道出身の山森さほ選手が勝利を勝ち取った。 

舛岡姉妹は、

姉が決勝戦で、

妹が3位決定戦で、
姉妹ともども最終日は敗戦。
ここぞという場面で、持ち得ている大技を決め切れなかったのが敗因であろう。

来春までの半年間を猛練習にあてて、技の完成度を高めることが当面の目標となるだろうか。

新たな武器を習得する前に、現在持っている技の安定感をあげて、

大会へ参戦してくれことを期待したい。

マスタークラス3位決定戦では、

中村学選手と新井正城選手が対戦。 

中村選手が技のバリエーションの多さで圧倒し勝利。 

バットフロントにスカイダイブと、

縦回転の豪快さはジャッジに好印象を与えた。 

対戦した新井選手は本大会での目標に、バットフロント成功を掲げていた。

あと数センチ、ライン側にお尻を寄せられていたならば、ビタメイクできたと思うのだが、惜しくも成功ならず。 

悔しい顔を見せていたのが印象的だった。 

来年の日本オープンでは是非ともバットフロントバットを成功させてほしいと思う。 


男女 一般クラスの順位を確定させるアンダートーナメント方式(各ブロック毎のトーナメント敗退選手が順位決定トーナメントへ回る形式) は、スラックラインライダーたちの人間ドラマを更に面白くさせていたといえる。 

女子ベスト8から篩にかけられて、

5位から9位の順位決定アンダートーナメント (オープン女子B)にへ進んだ5名。

最終日のオープニングゲーム第1試合では、このアンダートーナメントの田中咲希選手と松本美紀選手が登場。

 正直に言えば実力差は歴然で、田中選手が勝ち上がることは8割がたと確定といった状況にも、
オープニングゲームをしらけさせるようなことは絶対にさせないという“女の意地”とも言えるだろうか、松本美紀選手が奮闘。 

前日の初戦では、バット360度の横回転を失敗していたものを、このオープニングゲームの大切な舞台で完ぺきにメイク。
会場を沸かせた。

2分間の試合終了時には、笑顔で満足げな表情が、とても印象的であった。 

ただし結果は、実力差に勝る田中咲希選手の勝利となり、
アンダートーナメントの残り4人が最終確定。 

大西美雪選手VS田中咲希選手、

 佐々木優選手VS佐々木燈選手の姉妹対決が実現となった。 

大西選手と田中咲希選手の対戦では、こちらも実力差が大きかったので田中咲希選手が盤石に勝利、一つトーナメントを勝ち進み順位を上げる。 

佐々木姉妹対決は見どころ満載。
バットバック後方へのバク宙からのバットフロントのCOMBOを最後の最後で完ぺきにメイクした姉の優選手が勝利。 

これにて、アンダートーナメント( オープン女子B)決勝戦(5位~6位)は、
14歳同士の盟友対決が実現となった。 

トーナメントが勝ち上がっていくたびに、実力が拮抗する選手と対戦することが
醍醐味であるアンダートーナメント。 

従来のトーナメント形式では、国内ランキングを反映させてのトーナメントゆえに、実力が拮抗する14歳同士は、なかなか対戦する機会に恵まれなかった。 

とりわけ、
日本オープンのような格式あるレベルの大会では、それこそ相まみえて戦うことはなかった。
アンダートーナメント採用によって、大舞台で二人が戦うことになったわけだ。

14歳同士の次世代エースの座をかけた

真剣勝負。

互いに持ち得ている技の応酬。 

決め手は、一つ前の試合でも勝ちを拾う決定打にしたバット・バックからのバットフロントを、この決勝戦でも成功。 

更にダブではあったが、田中咲希選手のお株を奪う、720度横回転フロントスピンもほぼメイク。

大技を一つ多く成功させた佐々木憂選手に軍配が上がり5位を確定。

アンダートーナメント覇者となった。 

田中咲希選手もブレンダに720度スピン回転と大技を完全にメイクしているのだが、本当に僅差ながら、佐々木優選手が首の差で勝った状況だった。 

これにて第三世代の中学生以下の若手女子ライダーの中では、

2017年度の最終戦で佐々木優選手がトップに君臨したことを意味する。 

次に、初日ベスト16の戦いで篩にかけられて、敗戦した6名(2名は欠場8-2=6人の計算)を対象にした9位から14位のアンダートーナメント( オープン男子B)について紐解いていきたい。 

このアンダートーナメントには、
少し複雑なトーナメント方式になったので、補足事項も加えておく。
アンダー8名に対して、2名が欠場扱いとなったがゆえに
変則的に6名でアンダートーナメントを進行することとなる。
よってアンダートーナメント初戦を戦わずして、高科英一選手と平塚健生選手が、

1試合少なくシード選手扱いとなり12位以上を確定。

また、

アンダートーナメント初戦で敗戦し、通算2連敗の2人は、

無情にも最下位決定戦へ。 

結果は、
13位に竹部 叶大
14位 波多野雄哉選手となる。 

最下位は回避したいという強い気持ちで戦う真剣勝負は、鬼気迫るものがあり、非常に内容の濃い戦いだった。

波多野選手のフロントレバーはしっかりとキープされていてとても美しかった。

そしてラスト数秒を残してバット・バック・フィートを狙い、ラインに足がかかるも乗り切れなったのが非常に残念だった。

竹部選手は、残り16秒からアセンション720度を完ぺきにメイク。

来年の日本オープンへ向けて弾みをつける素晴らしい2分間の演技であった。


男子9位から12位までの順位確定トーナメントでは、

高科英一選手VS林映心選手からスタート。

どの選手が対戦相手でも、平常心で淡々とトリックをしていく林映心選手が縦回転COMBOを常に4つつなげてくるので、これがジャッジの印象を強めて勝利。 

アンダートーナメント決勝へコマを進める。 

トーナメント反対のブロックでは、
松本礼選手VS平塚健生選手のサポートライダー同士が対戦。
オープニングゲームで実妻・松本美紀選手の頑張りの奮闘が夫である松本礼選手に影響を与え感化されたのだと思う。 

松本礼選手が若手の有望株の一人である平塚健生選手を相手に、神がかったスーパーCOMBO連発して圧勝。 

ただ平塚健生選手が、もしもここで大技バット・ダブルバックフリップをしっかりメイクしていたならば、この勝敗は違っていたと思う。


この結果によって

アンダートーナメント決勝(9位決定戦)では、松本礼選手と林映心選手が確定。 

決勝の舞台でも上り調子の男、松本選手が神がかったメイク率を披露。 

圧巻は、最後の最後で成功さえたメイソンフリップ。
アンダートーナメントを制して、

全体16位中、一けた台の9位の順位を確定させた。
GIBBON国内サポートライダーとしての意地を見せつけた。

ここのところ大会では存在感に陰りが見えていたのも事実であったが、この日本オープンの大舞台で、松本礼選手が再び存在感を発揮した。 

ここからは更に一つ上のトーナメント準々決勝(5位~8位)で敗退した4名の選手を対象にして進行する順位決定アンダートーナメント(オープン男子A)について触れる。

ヤンローゼ選手VS細江樹選手
石田創真選手VS大杉徹選手
以上の組み合わせが実現。

ヤンローゼ選手と細江樹選手のエンターテーナー対決も見どころ満載。 

サーカスを見ているような試合運びで、トリックライン技のバリエーション引き出しの多さに独創性豊かなスタイルは会場を大いに盛り上げた。 

トリックラインの技術面だけ見れば実力的には細江樹選手が格上で軍配が上がる。 

ただ、技術面で明らかにヤンローゼ選手が劣る状況下にあるにもかかわらず、
なぜか拮抗した試合運びだった印象を終わった時に植え付けられていた。

ヤンローゼ選手の存在感を改めて実感したのが正直な気持ちだ。 


反対ブロックの石田創真選手と大杉徹選手の対戦。 

言わずと知れたヘイワイルドの同門対決である。 

ヘイワイルド創始である大杉徹氏を対戦相手に、さすがに石田選手も気負いはあったのだと思う。
ここまで戦ってきた攻めの石田選手に比べると、技のダイナミックさにかけていたのは否めず、

そこをジャッジには見透かされた形で大杉選手が勝利する。 

こうして勝ち上がった2人が5位決定アンダートーナメント決勝戦へ。
7年以上もの間、日本スラックライン界に関わり続けてきた2人。
細江選手は今年度「FULL COMBO」世界王者へ輝き、

王者の風格すら漂う中で、

大杉選手を相手に圧倒するシーンを常に見せつけ印象づけた。

トリックラインの第一次ブームの時代を築き上げた歴史の終結を予期させるものであり、

感慨深いものであった。 

結果は、もちろん細江樹選手の勝利となるり5位を確定させた。 


ここからは本戦 準決勝第1試合

須藤美青選手とジョバンナ選手の対戦について。
2016年にドイツ開催のスラックラインマスターズにて、直接対決で戦っている二人。 

この時の対決では須藤選手が勝利し、そのままの勢いに世界王者へ輝いた。 

ジョバンナの立場からしたら、あの時の雪辱を晴らす、またとないチャンス。 

2度も同じ選手に負けることはプライドが許さないといわんばかりに、
ジョバンナ選手は序盤から全力で攻め続ける。 

そして、先手で時間をどんどん使い、ほぼノーミスで2分間を乗り切った。

対して、いまいち調子をつかめず乗り切れない須藤選手。
技術的にはジョバンナ選手を圧倒する技数を持っていた須藤選手だが、ジョバンナ選手の危機迫る演技に終始 圧倒されペースを握ることができなかった。 

ジョバンナ選手が勝利する。 

続く準決勝第2試合
福田恭巳選手と岡田亜佑美選手。 

この対決はこれまでに幾度となく観てきたが、ここ2年間は縦回転からのフィート系の技をメイクしたほうが勝つ傾向にある。 

バット・フロント・フィートに、バット・バック・フィートと、どちらも完ぺきにメイクして力強くガッツポーズでジャッジに全身で気持ちをアピールしていた福田恭巳選手が勝利。
決勝へコマを進めた。
 

大番狂わせとなったダークホースは、本大会で早坂航太選手。 

初日にヤンローゼ選手を破る大金星をやってのけると、 その勢いのままに続く決勝ラウンド準決勝ベスト4では田中輝登選手を破る。 

決め手は、世界初となるフロッグ・フルからのダブルフロントフリップの大技。 

会場から、大きなどよめきと歓声が飛んだ。そして間違いなく観客を味方につけた。 

田中輝登選手は、4つ以上の技をつなげてコンボで構成を考えていたが、それはISIルールでの難易度の価値観である。

 一発一発の美しさについても重視に判断しているGIBBON大会の特性上、
4つ5つのCOMBOを打ち出しても、それが美しさにかけるのであれば、点数は伸びない。 

COMBOがイコールで加点が倍に倍にと増えるわけではないので、
それが無駄な時間の使い方になり、田中輝登選手は仇となった気がした。 

GIBBON JAPANの全てのジャッジングシートは開示されている案件ではないので、多くに触れるのは差し控えるが、ISIルールと、

これまでも独自路線で進めてきた日本オープンではルールは全く違う。
スラックラインが世界でスタートしてから、
1対1のトーナメント大会として最古の歴史を持つ日本オープンは独自の進化を遂げて、

採点基準を設けているということである。 

ここが勝敗を分けたと思っている。 

また最後の最後で、早坂選手がダブル・イラノを果敢に挑戦して、続けざまに会場を沸かせたことが成功しないまでもジャッジの心を動かしたポイントであったことも補足しておきたい。

Liveストリーミング配信ではネット回線の問題で、この瞬間の決定的なシーンはフリーズしてしまっているので、
VIDEO JAPANさんのYouTube動画が下記にリンクされているので、あらためて動画を検証していただけると会場の空気感がわかるはずだ。 


どのシーンが盛り上がっているのかを

理解すれば、勝敗を左右した"際"がわかるはずだ。

そして、準決勝第2試合
木下晴稀選手とペドロ選手。 

両者、大技のオンパレードで出し切った中でペドロが勝利した。 

木下選手も自身のSNSを通じて、全力を出し切って
負けたことを認めるほどに、世界を代表するといえる最高レベルの1試合だった。 

それほどにペドロは強豪中の強豪であったということだ。 

この結果によって

決勝戦は、早坂航太選手とペドロ選手となった。 

3位決定戦は
男子が木下晴稀選手と田中輝登選手。
女子が須藤美青選手と岡田亜佑美選手。

どちらも高校生同士の対決となった。 


須藤美青選手と岡田亜佑美選手。 

同じ栃木県在住で、何かと比較の対象にされ続けている2人ゆえに意地の張り合いで試合が進む。 

須藤選手はフロッグからフィートにバックタスティックを成功させるなど素晴らしい演技を見せていたが、最後の最後に、フェアレスからのアセンション720度をぎりぎりメイク。

これがジャッジにしっかりと評価されて岡田亜佑美選手が辛くも勝利。 

こちらもどちらが勝ってもおかしくないほどに僅差であった。

岡田選手は足首のケガが癒えぬ中で、痛みに耐えて3位表彰台を獲得した。 

価値ある3位だろう。


木下選手と田中輝登選手の3位決定戦の試合について。 

お互いに譲らぬCOMBOの連発。

ラスト演技では、木下選手がバットバックダブルからエンジェルなど、多彩にダブルの縦回転を組み込み構成したのが、演技構成バリエーションの豊富さを印象付けた。 

具体的に言えば、準決勝のラストに出した回転を、あえて逆にしてシングルのバックをきっかけにナット・フロント・ダブル、更にバット・バック(シングル)を入れて、そこからダブル・バックフリップと4COMBO。 

持ち得ている技で構成を少し変化させてきたのが素晴らしかった。

ちなみに、ここで4COMBOというキーワードが小布施スラックライン部の選手には多く使われている傾向があるのが、ご存じだろうか!?

実は小布施ルールの一つとして、COMBOをやるならば4つ以上を組み込んでいこうという、

ある種の仕来りが存在する。 

これが小布施スラックライン部に所属するトップ選手たちの強みでもある。

対して、
田中輝登選手は、ダブルバック・バーナーや、ダブルバック・フィートなど、バックのダブルの最高難易度の技を打ち込むも、これが悉くメイクできず。 

ここが勝敗を分けたと感じている。

結果は木下晴稀選手の勝利。 

気になる点を一つだけ。
選手側サイドの目の肥えた観客から、

これだけの大技を連発していながら、3位決定戦では大歓声が湧き上がる状況が非常に少なかった点だ。 

これが今回の決勝に行けなかった二人の“際“の部分である。 

非常に難易度の高い技を打ち出しているのはわかるのだが、

もはや見慣れた光景であり、感動は薄れてしまっている。

こうしたエクストリーム系スポーツにおいては、選手は常に気に留めておかなければいけないことなのだが、トップ選手たちには誰も見たことも無い技を繰り出す挑戦というスタイルを出し続けなければならない。

技術が上がれば技の習得に時間がかかるのもわかる。

更に難易度の高い技の習得にはケガのリスクが伴う。

それでも大会ごとに、もしくは半年ごとに一つは違う技を伝えるパフォーマンス精神が必要になる。

決勝へあがった早坂選手は、ほぼ練習では打ったことすらない、ダブルイラノやフロッグ・フルからのフロントダブル。

一緒に毎週のように練習で顔を合わせる者たちですら見たことがない大技だった。

この挑戦というキーワードが人の心を動かす。

来年に春までに新たな武器を引っ提げて、この舞台へ戻ってきていくれることを二人には期待したい。

そして技術だけではなく、何が必要なのかを各々の価値観で考えて、

GIBBONライダーであることを自覚し、
決勝へ上がれなかった現実としっかり向か合わなければならない。

転換期の岐路に立たされている。


オープン女子決勝戦。

福田恭巳選手とジョバンナ選手。

久々に感情をむき出しにスラックラインをしている福田選手を見ることができた。 

ジョバンナ選手と戦う選手たちは、ここまでその気迫に押されて、委縮してしまう傾向があったが、福田選手だけは違った。 

さすが百戦錬磨の絶対女王である。


準決勝同様に、本大会のラインの跳ね具合に順応してきた福田選手は、持ち得ている技のおCOMBOをほぼノーミスで2分間のりつづけた。 

文句なしに福田恭巳選手が日本の頂点へ。 

今年は春先の 

「SLACKLINE FREESTYLERS」優勝 

「SLACKLINE World Cup FULL COMBO」女子最高位 

「GIBBON NIPPON OPEN」優勝 

国内3大タイトルのすべてを総なめにしたことになる。 

彼女にとっては、女王返り咲きの素晴らしい一年であったといえる。
 

さてメーンディッシュの男子決勝戦。

準決勝同様に早坂選手はフロッグ・フルからダブルバットフロントに単発マッド・フリップと大技をメイクしていながらも、
あと一歩で、またもや優勝を逃す。 

優勝はブラジル出身のペドロ選手。 

早坂選手は、今年6月にフランス開催の国際大会「NATURAL GAMES」でも、
あと一歩で準優勝。 

2年前だったか、ヤンローゼが初来日の時の「GIBBON CUP」決勝戦でも準優勝と、
無冠の帝王っぷりは、やはり健在で、海外選手を相手に、またもや優勝は…お預けとなった。

とはいえ、総括して一言添えるならば、ここのところ関東勢の元気がないのが、

東京出身の筆者としては悩ましいと感じていた矢先に、

早坂航太選手(東京)に福田恭巳選手(千葉)と、二人が活躍してくれたことは本当にうれしい限りだ。
 

また一つだけ苦言を呈しておきたいことがある。 

これは選手OBに競技者へ向けての話だ。 

競技者は、ラインへ乗ってしまえば非常に輝いた姿を見せることができる。 

ただ、そのトリックライン競技は1対1で戦う特性をもっている以上、ラインへ乗っていない時間帯の立ち振る舞いを今一度、正すべきだと思っている。 

ラインに乗る前にMCが呼び込む際の気構え、
ラインに下りた段階で、ラインを対戦選手に譲る際も、気怠そうにマット横へ移動するのは、
観ているものを不快にさせる可能性があるからだ。 

来場している一般客の方の声を横で聞いていて、筆者自身も気づけた点だ。 

「あの人、終わったとき、なんであんなに暗いの!?」

「どこか痛いの!?」

「我慢しているの??」 

柵外から、ボロかすに言い放っているおばちゃんがいたので、

それを見過ごすのはどうかと思い、駆け寄って声をかけた。

 「そんなことないですよ、選手たちは真剣にやっていますよ。下を見ているのは、次に何(どんな技)をやるか考えているんですよ」 

観客によっては競技をしている選手だけではなくて、

待機している選手にも目を配ってるということなのだと思う。

下を見ているだけでも、批判的な印象を持つ人物もいる。 

その観点から見れば、今回初参戦となったブラジル人選手のペドロは、

常に陽気に試合中は笑顔で過ごしている。 

だれが見ても不快な気持ちにさせない。 

柵外で見ている観覧者は、柵内にいる選手の誰を見ているかわからない。 

常に気配りを持って立ち振る舞うべきである。 

そして、更にこれに付随する形で突っ込んだことをもう一つ言うならば、
アンダートーナメント順位決定戦の進行時に、イベント進行の内容とは全く関係ないことで
柵内で選手OBや関係者が、げらげら大声で笑いながら話している姿を
真剣勝負で参加している選手たちが見たときに、どう思うのかも考えるべき点である。 

そんなに同窓会トークをしたいのならば、
大会進行の目の届かないところで話せばよいと思う。 

選手ファーストで考えたら、
自分の試合時に観てもらえず、トークを楽しんでいることを目の当たりにしたら、
どれだけ落胆するか熟慮するべきだ。 

必要ならば、選手向けの控室が数百メートルほど先に用意されているのだがら、
出場選手や一般客が気にならないように、会場外で話してほしい。
このことを踏まえて、柵内に誰でも入れるようなことについては、今後、運営側も徹底するべき点であろう。

 警備員を付けるなどのルールを追加するべきだと思う。 

こんなことまで、地域のお遊戯会や運動会のようなレベルで
記事に盛り込むべきなのか悩んだが、これもまたスラックラインが品位あるスポーツであるブランディングをみんなで積み上げていくべき今だからこそ、あえて書かせていただく。 


選手の家族であれ、選手と親しい関係者であれ、
柵外でモラルある行動をとっている方々が実際にはいる。

岡田亜佑美選手の親御さん、

福田恭巳選手の親御さん、

他の親御さんも皆そうだが、柵外から見守っている。

赤の他人からしたら、これが常識ある者たちである。


格闘技やボクシングでいえば試合会場のリングサイドバックパスを使えて柵内に入れるのは
ごく限られた存在だけだ。 

実はWorld Cup「FULL COMBO」でも
選手エリア、マスコミエリア、招待客エリアと、
それぞれのカテゴリー分けをしっかり行なわれていた。 

マスメディアの立場である以上、選手エリアへ立ち入ることが禁止であるのを知りながらも
どうしても選手に話を聞きたくて選手エリアへ入ってしまった際に、

関係スタッフの方に指摘され、禁止エリア外へ移動するように諭された。 

非常にみっともない お恥ずかしい話だが、あえて自分の落ち度ある行動を記事にすることで、
日本オープンで改善するべきポイントを再任してほしいからでもある。 

そして、このことは今でも猛省している。 

そのほかも、レッドブルラック横のところで、胡坐をかいてマナー悪く座っていた関係者も
𠮟責される一幕もあった。 

このコラムを見て、自分にも思い当たる節があったら、大会時はモラルある行動で

改善していってほしいと切に願っている。    

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