『無限ハメ・コンボ』について


FULL COMBO JAPAN 2018 

大会初日・取材ルポ

文:FREEFALL編集部 高須基一朗 


 本日16日から明日17日の2日間をかけて開催される「FULL COMBO JAPAN」。 

 初日の午前中はアクティブクラス、ハイクラス、スーパークラスの3つのクラス分けの中で

初心者向けのアクティブ・クラスから進行がスタート。 

 アクティブ・クラスの競技ルールについては、ダビング(接地面の利き足を利用して落下を防止する等)が減点の対象に無いことから、参加する各選手は、減点対象のダビングを気にすることなく、

思いっきって技をトライする姿勢が伺い知れる状況にあった。 

予選通過16名以上の技術スキルを拝見させていただたうえで判断するに、 

今回の予選通過ボーダーラインは、

アセンションにバット・フロント360度あたりをCOMBOでつなげてクリーンメイクするか否かがだったのではないかと思う。 

初心者クラスといえども、この16名には非常に将来性を感じた。


予選通過ベスト16に勝ち上がりは 

佐々木羽菜選手 松下隆興選手 北垣智大選手 小山慧悟選手 番場奏音選手 山本紗衣選手 鶴田飛男選手 野中レン選手 大原健太郎選手 高島勇夫選手 菊川信選手 奥田雄大選手 宮下卓也選手 望月紗也香選手 山本瑞季選手 菅澤豊選手 以上16名。 

そこから更に篩にかけられて決勝戦には

佐々木羽菜選手 

松下隆興選手 

小山慧悟選手 
番場奏音選手 
鶴田飛男選手 
大原健太郎選手 
菊川信選手 
奥田雄大選手 以上8名。 
アクティブクラス競技は本日のみで

すべてが執り行われ 優勝者は確定したが発表は明日に持ち越されている。 


アクティブクラス予選とハイクラス予選の合間には、余興の一つに 日本スラックライン界のレジェンド我妻吉信選手がライン上でバランスを取りながら、テニスボールをキャッチするパフォーマンスは非常に盛り上がりを見せていた。 

 この余興で客席の中からランダムに選ばれたお客様がテニスボール1球を渡され、
我妻選手めがけて投げる。

これを我妻選手が見事にキャッチを成功すると、豪華にもイギリスで販売がスタートしたスラックラインブランド『MACACO SLACKLINE』の初心者向けクラシックラインがプレゼントされた。

 今後、『MACACO SLACKLINE』の国内販売も小布施スラックライン部で推奨して進めていくようだ。


 「小布施トリックライン」
 

小布施スラックライン部ライダー監修、 スラックライン推進機構公認となるトリックライン専用ライン(蛍光オレンジ色)が 本大会では初お披露目で使用された。 

 この新商品トリックラインに乗った選手たちの感想を聞く限り、 他社ブランドのハイエンドモデルと比べても遜色のない跳ね具合を実現しているとのことである。

 数種類の編み込みに縫い合わせのラインを用意して何度かのテスト・ライドを重ねて、

初期ロット版の本製品が完成。

大会使用できるクオリティーの高い製品に仕上がっていると判断して間違いないだろう。 


アクティブクラスが終わると、続いてハイクラスがスタート。

このハイクラスより、スラックライン推進機構公認で初導入されたジャッジ・システムが採用された。 

イベントの表題「FULL COMBO」の通り、このジャッジシステムは時間内に可能な限りCOMBOをし続ければ、高得点が狙えることが前提となっている。

各選手がヒート毎の持ち時間に4COMBO以上、欲を言えば10COMBOを目指すのが好ましい。

ハイクラス参戦の各選手は、この新ルールに不慣れなこともあり最初の第1ヒートは苦戦を強いられている印象を受けた。 

そんな中、ある一人の選手が持ち時間60秒に対して、大半の時間を連続モジョタップでCOMBOを重ねて加点をしていくスタイルを貫く。

本人が諮らずも、これが一つの口火を切る形となってしまい、

これに続く形で第2ヒートに入ると、

選手たちが次々に同じように軽微な技を乱用するようになる。

同一技を何度も使おうが加点の対象となる本ルールから、続けざまに同じ技を無限に続けてコンボをしていけば10点の初級技を最高で『3.5倍』まで増やすことができる。

要するに、 60秒間でずっと休まずモジョタップを続けた場合、 

10+11+12+13+14+15+16+17+18+19+20+21+22+23+24+といった具合に、

減点なしの35コンボで合計585点を叩き出す計算となる。 

仮に1秒で1回モジョタップを繰り返せば、単純計算35秒で585点である。

 更に、ここから60秒間を休まずCOMBOでつながれば、残り25秒×35点=875点を荒稼ぎすることが可能となるわけだ。 

もちろん、ここにダビングなどがあった場合、減点50%となるが、それでもCOMBOで続いていれば、そのまま継続加点の対象となる。 

もしもダブなしで60秒間を1秒単位でレベル1の技を完ぺきにやり切った場合。 

レベル1のみを無限に続けて1460点の高得点を獲得できる。 

とはいえ、

モジョタップで同一方向に回転を60秒間を休むことなく続けるのは、初級の基本技の一つとはいえ、

目も回るし、一定以上の技術を要し体力的にも相当に大変な取り組みとなるわけで

トップ選手でない限りは、

かなり難しい。

 目が回らない更に理想的な『無限ハメCOMBO』は、チェスト180→バット180チェストを無限ループするスタイル。 

これを続けていくスタイルで二ケタ台10コンボを超えて初級技でも高得点獲得の加点モードに入った段階で最後にレベル3の技をCOMBOのフィニッシュに持ってくるスタイルで高得点をたたき出した選手もいる。 

このような、無難な技をつなげるだけの無限ループCOMBOを続けるスタイルについて、

専門誌の立場として見過ごすことも出来ずモノを申したい。 

本大会で初お披露目のルールの盲点を突いたといえばそれまでだが、やはりトリックラインの醍醐味である難易度の高い技をつなげて魅せる根底の面白さを台無しにしているのでないだろうか?? 

実は約2週間前に、このハイクラスに選手として参戦している舛岡選手と佐々木選手の両名から、

このスーパーマリオの『無限1UP』のような『無限ハメCOMBO』について、指摘する質問状がスラックライン推進機構へ届いている。 

このルール上の盲点に気付いていながら、増岡選手も佐々木選手も『無限ハメCOMBO』を、本日の予選で乱用してない。 

これを乱用していたら、もしかしたら二人ともベスト8の本戦出場も叶ったかもしれないが、それをしなかった既成事実に、明日の本戦へ進んでいる選手たち8名の一人一人が熟慮の上、60秒間をどのように競技するべきなのかを判断しなければならないのでないだろうかと思う。 

運営するスラックライン推進機構も、このルール上の改善が必要とされる盲点を事前に把握していたものの、正式に新ルールを発表後、進めているボタン式の点数盤システム構築をぎりぎりで変更することも難儀であり、本大会はルールに則り、『無限ハメCOMBO』で姑息にコツコツ得点を重ねることを優先する選手がいても、それを咎める立場に無いと判断している。

それはその通りである。

各々の選手の倫理観や価値観と判断に委ねる形をとったということだ。 

ただ、会場にいた選手や関係者で気付いている方もいたかと思うが、午前中のアクティブクラスの進行している時間帯については、お客様も応援する方が多数いた状況に対して、

この『無限ハメCOMBO』が進行しているイベント中盤の時間帯は、客が席を離れてしまっていた。

スラックラインを愛してやまない競技者が、スラックラインを"面白くない競技"としてお客様に見せてしまっている状況は正しい判断なのだろうか!?

X-スポーツの要素が強いトリックラインは、危険と隣り合わせで技を打ち出していくからこそ、その面白さが伝わるものだと思う。 

選手も、その危険と隣り合わせなぎりぎりのところで戦うからこそ輝けることを知っているはずだ。 

選手が身を削り果敢にトライしている姿を見せることができるかが、競技者の品格を問われることでもある。 

明日の決勝ラウンドに出場のハイクラス8名にスーパークラ12名の合計20名の選手たちが、 

この『無限ハメCOMBO』について、どう立ち回り技の演技構成を考えて挑んでくるのかが非常に楽しみである。 

0コメント

  • 1000 / 1000