FULL COMBO 2018 総括
文:FREEFALL編集部 高須基一朗
(写真左:木下晴稀選手 / 写真右:中村侑我選手)
大会終了後2日間が経過し、熱が冷めぬうちに大会総括ネット記事を寄稿させていただく。
まず大前提としてシステム構築して1~7段階に各種レベルに合わせて技に評価をつけて試みた
新ジャッジについては、運営システム上の大きなトラブルもなく円滑に進行、
更に国産オリジナル・トリックラインは抜群な跳ね具合を提供することが出来ており、 ライダー達もご満悦。
国内のこれまでの大会とは全く違う新しい試みの数々を組み込んだ "挑戦" がテーマの大会であったものの、
大成功となり素晴らしかった。
このネット記事をご覧いただいている皆様の大半の方は、おそらく『ハイクラス』のルールに則った戦略で表彰台へ上り詰めた選手について厳しく酷評する記事を期待していると思う。
ただ、冒頭から皆様の期待を裏切るようで申し訳ないのだが、
ハイクラス決勝ラウンドの中盤で心打たれる瞬間があったので、
意外と思われるかもしれないが、その側面について切り取りとって記事にしたい。
その心打たれる瞬間とは、
西和子選手のインタビューブースでの悔しさ滲む『コメント』の発言時にあった。
西和子選手の試合終了後のコメントは以下の通りだ。
『悔いが残りますね…COMBOが得意なのに、準備不足です…』
愚痴一つこぼさず、己の準備不足に対して激しい憤りを感じていながら
多くを語らずコメントを残した。
ここにスポーツに対しての取り組む姿勢と清々しい人間性を垣間見た。
HEAT2で、ルール上の盲点を突く形で点数を稼ぐために単調な技の連続コンボ、
バット180チェスト→チェスト180バットを続けることを西和子選手は選択することも出来たと思う。
しかしながら、それを選択せずに自身が持ち得ているトリックラインの技量と技術の限界へHEAT2の出だしから果敢に挑戦していた。
この覚悟と決意についても非常に心を打たれた。
『VIDEO JAPAN SLACKLINE』さんのYouTubeチャンネルで
後々にハイクラス競技動画は公開されるのだろうから
西和子選手のHEAT2動画が投稿された段階で、是非ともあらためて観ていただいて読者の皆様には、各々が各々の価値観で判断してもらいたいと思う。
更に紐解いていこう。
HEAT2競技前の段階で、HEAT1での西和子選手の得点は385点。
決勝ラウンドに残った8人中で総合順位4位。
決勝ラウンドに残った女子3人中3番手と、がけっぷちの事情にあったと思う。
その状況下で、HEAT2では、最初から難易度の高い大技であるアラビアンを果敢に打ち込んでいった。
ライン上に一度は乗るもセンターをとらえることは出来ずラインに弾かれてしまい不発に終わる。
更に、その次にラインに乗ったタイミングでもアラビアンを再挑戦して打った。
これも同じように不発に終わる。
結果的に、前半に攻めた技が不発に終わってしまったがゆえにリズムを崩してしまい、得点は伸び悩み順位が入れ変わることなく、表彰台の頂上に上り詰めての逆転優勝は叶わなかった。
ただ、わたくしの中で西和子選手が、本大会で本当の意味でFULL COMBOの主催者の意図を見極めて戦い切ったハイクラスのカテゴリーでの選手の一人であり、もしも筆者が運営に関わり賞を選ぶ立場であったならば、
得点での順位とは別に西和子選手に栄えある賞を与えたいと思った。
そして、この大会を通じて、ますますファンになった。
スーパークラスの選手12名については、大会2日目オープニングゲームより6試合で登場。
さすがスラックライン・ブランドのサポートを受けているライダー達である。
トップライダーとして品位を問われる中で、どの選手も素晴らしい90秒の競技構成を選択し、各々の技量で観客を魅了する迫力あるトリックライン競技を行っていた。
とりわけ、この新ルールに順応して素晴らしい演技をみせてくれたのが、
大会開催場所である小布施町出身である木下晴稀選手と中村侑我選手の2人。
組み合わせ順は籤(くじ)引きで決まる状況ながら、諮ったかのように最終試合で両選手が直接対決。
最終試合前の段階で、既に得点上で1位、2位については両選手を超える状況ではないことが明らかとなり、事実上の優勝決定戦となる。
HEAT1では中村侑我選手が2300点をたたき出して暫定一位。
それを追随し、最終90秒で逆転優勝をできるのかが木下晴稀選手にプレッシャーが重くのしかかる事情にもあった。
意地のぶつかり合いの争いは、
大会自体の質を底上げし、会場にいる全ての観客を満足させて帰ってもらうだけの説得力のある競技を見せつけた。
気力・体力ともに最後の一滴まで出し切って戦い、後世に語り継がれる名勝負が生まれたといえる。
そして、既に読者の大半はご存知のことと思うが、木下晴稀選手の90秒間で51コンボの神がかった競技構成。
90秒間で一度たりともライン上から降りることなく演技をやり切り逆転優勝を果たす。
昨年度、この場所で開催されたスラックライン・ワールドカップで優勝を逃して悔しい思いをした木下晴稀選手が、一年の歳月をかけて雪辱を晴らし、頂点へ上り詰めた。
おめでとう晴稀!
来年は、この満足感を更に超えてくる素晴らしい大会を用意できるのか!?
期待が高まるばかりだ。
【FULL COMBO JAPAN HEAT2 HARUKI vs YUGA】
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