GIBBON CUP開幕戦「大阪の陣」 総括

文:FREEFALL編集部 高須基一朗


GW中に開催されたGIBBON CUP開幕戦についてWebコラム記事を久々に寄稿したいと思う。

本誌「FREEFALL」を定期購読いただいている方には、

一両日中に次号が手元に届き、GIBBON CUP開幕戦の特集記事をご覧いただける。

ただ本誌ページ数に限りがあり、掲載したかった内容すべてを盛り込めなかったので、

文字数に制限のないweb記事を通じて追加記事と判断して読んでいただければと思う。


まず結論から言うと、大阪での開幕戦は大成功に終わった。

高い身体能力と技術の応戦で名勝負が生まれ、

人間ドラマが連続した

歴史に残る一日であったともいえるだろう。


本大会よりJSFed(日本スラックライン連盟)より新たな発表として、

採点方法ルールを一部改正。

本戦トーナメントより各試合ごとに得点を開示・発表することとなった。

これによってヘッドジャッジ7点、サブジャッジ2名が5点と合計17点を

戦う2名の選手に対して、採点基準に則り優越をつけて点数を割り振る。

ジャッジ3名の採点した合計点数で、高い点数を取った選手が勝利となりトーナメントを勝ち上がっていく方式である。

これによって1対1の対決において、どちらの選手に優越がついたかをはっきりと

数字化した形でわかるシステムが導入されたことを意味する。

選手目線で考えると、勝敗を決した結果について透明性が出たといえるだろう。

まずは、ジュニア部門の男女ともに絶対王者が存在してしまっている事情について紐解きたい。

開幕戦を観戦して率直に感じたこは

男子ジュニア中村陸人選手と女子ジュニア岡澤恋選手の優勝を脅かす存在は、

年内には現れないかと思う。

開幕戦において、この二人が圧倒的な力量の差を見せつけて優勝してしまっている。

これまで、ジュニア競技選手については、ジュニア同士、同じ目線のフィールドで戦うべきであるとREEFALL編集部では推奨してきたが、これほどまでに力量に差が出てしまうのであれば、ある一定数を超える優勝回数を重ねたジュニア部門の小学生~中学生の選手については、自動的にジュニア部門からオープン部門へ年齢・性別に関係なく、

移行するという新たなルールを選手に課しても良いのではないかと思い始めている。


そして36歳以上限定のマスタークラス。

九州は福岡のトリックマスター太田朋史選手と我妻吉信選手の決勝戦の試合は見ごたえ十分だった。

我妻選手の決勝戦での試合内容についてだが、

全体的な競技構成もしっかりと考え抜かれており、ダブがゼロのバット・フロント・フィートなどを勝負所でクリーンメイクし、常に太田選手を一歩リードして戦い続け

試合巧者であった。

ただ採点判定は、17点中で9-8と、わずか1点差で我妻選手が勝利。

これは確率論の話だが、

例えばだが、

おそらく戦う選手の力量が僅差の事情では、

ヘッドジャッジが4-3、サブジッジが3-2に2-3と割れるパターンは多いと思われる。

同一点数評価で、

ジャッジ3名の判定が割れなかった場合であれば、上記点数の評価だった場合は、

単純な足し算で10-7に割り振られる。

むろん、この限りではないこともあるが、明らかに力量に差がない戦いであれば、この1点の差で判定が出た状況で考えると、ボクシングやレスリングで試合がもつれ込んだ場合に用いられる用語の「スプリット・デシジョン」であり、

3名の内1名のジャッジが他2名とは違う評価でジャッジの点数を評価したケースが高いということを示唆する。

ヘッドジャッジが4-3、サブジャッジが同一見解で2-3、2-3、このパターンも有り得る。

力量が僅差である場合は考えにくい採点だが、5-2、2-3、2-3のパターンもあり得るだろうか。

それ以外にも組み合わせは何パターンかあるが、

数字ばかりを活字で載せても、ややこしい表現になるので割愛する。

前提として9-8という数字で採点評価が出た場合のケースは、ジャッジ3名の判定が割れた可能性が高いと解釈するのが良いだろう。

大会終わりに太田選手へ声をかけたところ、

「ここで勝ちたかったんですよね…」と、一言…悔しい言葉をこぼしていた。

この悔しさをバネに、次は優勝を目指して頑張ってほしいと感じている。


オープン女子部門について。

躍進したのは渕上万緒選手。

今シーズンの国内トリックライン女子市場の今後の勝敗の行方を占う意味でも、

GIBBONシリーズ戦/開幕戦で

渕上万緒選手が3位フィニッシュで表彰台を勝ち取ったことは非常に大きい。

須藤美青選手を相手に準決勝戦で敗戦したものの、

メイソン・フリップやイラノ・フリップの大技を渕上選手がコンボで成功していたならば、決勝へコマを進めていたであろうと感じた。


トリック技数の側面に目を向けた場合、他の女子ライダーと比べても頭一つ秀でている状況ゆえに、成功率さえ上げてしまえば、年内に誰も太刀打ちできない国内女王の地位へ上り詰めることも夢ではないと感じた。


須藤選手に敗戦して3位決定戦へ進んだ渕上選手は、

反対トーナメント準決勝戦で敗戦した佐々木燈選手と対戦。

こちらも採点は、マスタークラス決勝戦 同様に9-8と割れる判定となった。

おそらく割れた評価の対象として考えられるのは、

佐々木燈選手のダブル・ブレンダの評価かと思う。

あの技の評価一つ分が、減点対象であったかが3位の勝敗を左右しただろう。

決勝戦は、栃木県出身の同郷対決となる須藤美青選手と岡田亜佑美選手。

これまでも決勝戦の舞台で、幾度も名勝負を続けてきた2人だが、本大会ではフロッグ・フィートをクリーンメイクした段階で、須藤選手に軍配ありだった。

昨年の日本オープン決勝戦で岡田亜佑美選手を対戦相手に、フィート技一つの武器が成功しなかったことで優勝を逃した須藤選手が、開幕戦で巻き返し借りを返した形だ。


男子オープン部門については、半年間で国内レベルの平均値の底上げが凄まじき速度で上がっており、選手層の厚さを改めて実感した。

以前より、編集部内で「国内トリックライン新四天王」とカテゴライズさせていただいている木下晴稀選手、田中輝登選手、細江樹選手、中村侑我選手、

この4人に割って入るスキルを持つ選手が、今大会を通じて2人も現れた。

国内でも根強い人気を持つパイナップルを愛してやまない男…石田創真選手と、

スラックライン室内施設ガンバデを活動拠点にしている期待のホープである菊川信選手の両名だ。

ともに室内トリックライン施設で冬場のオフシーズンも連日・練習に精を出してきた選手であり、昨年の秋から今期・春までの半年間で見違えるほどに成長を遂げていた。

この急速なスキルアップを見るに、更なる成長を見せてくれる未来しか思い浮かばないので、今後の「トリックライン四天王」ポストの座については、あらためて見直さなければならない事情にあるかと思う。

そして、この2人が開幕戦の予選で予期せぬ大事を引き起こした。

GIBBON CUPはルール上、

シード選手以外は、1次予選で各グループから2名が最初に勝ち上がり、

その後に勝ち上がれなかった選手がグループ内で2次予選を戦い、残り1名の枠を争う。

因果な関係なもので、昨年のJSFedランキングの事情でグループが2組に振り分けられ、

予選グループ1組に選出されたのが細江樹選手、中村侑我選手、石田創真選手、菊川信選手、栗田賢二選手、林映心選手の合計6名。

強豪選手ばかりがグループ1組に選ばれる。

これにより、1次予選で2名通過→最終1名通過の合計3名のみが決勝トーナメントへ進む狭き門のプレッシャーが重く伸し掛かる、潰し合いの「死のグループ予選」がスタート。

ここで最初に勝ち上がりの名乗りを上げた2名が、

前述の急成長選手と評価させていただいた石田創真選手と菊川信選手。

大方の予想では、1次予選で細江樹選手と中村侑我選手の2名が勝ち抜けると思われたが、

両名が1次予選を取りこぼして負けたことで、2次予選で更なる熾烈な潰し合いが勃発。

見ごたえ十分な2次予選の勝負であったが、勝負どころのモジョフラットをつなぎ技でコンボる場面で、中村侑我選手が痛恨のミス。これとは対照的に大技を要所で決めきった細江樹選手が、見事に本戦最後の枠を勝ちとった、

この結果によって、中村侑我選手が競技人生で初となる予選敗退の事態が生まれたことも衝撃的な事実となった。

凱旋帰国後、トリックライン大会への1年越しの復帰戦となる細江樹選手には、休む間もなく試練が続く。

本戦一発目でシード選手である田中輝登選手とぶつかる事に。

この勝負も名勝負であったが、やはり予選2試合で心身ともに削る連戦が続いた細江樹選手。

それとは対照的に、体力満々で本戦へ臨んだ田中輝登選手とでは、明暗がはっきりした。

中盤までは、どちらが勝ってもおかしくない展開であったが、後半で細江樹選手が失速。

田中輝登選手が勝利する。

この勝利で勢いがついた田中輝登選手は、続く準決勝でも危なげなく勝利。

決勝へコマを進める。

対する反対側のトーナメントでは、

木下晴稀選手が本戦初戦で山口隆文選手に完勝。

続く準決勝でも、石田創真選手を相手に勝利。

石田創真選手は、予選を全力でぶつかり、本戦第一試合でも強豪・早坂航太選手相手にも全力で戦い切り勝利。準決勝の木下晴稀選手との対戦では、完全にガス欠状態に。

精彩を欠き、技の成功率が明らかに下がっていたのが印象的だった。

こうして、決勝戦は木下晴稀選手と田中輝登選手となる。

両者、この日の開幕戦に向けて大技を披露。

木下晴稀選手はマッド・フリップ。

田中輝登選手は、エストニアン・バットバックフリップから繋ぎの捻り縦回転

クレイドル・バックへとつなぐコンボ。

両者譲らずの大技コンボのオンパレードの展開が続いたが、メイク率に若干ではあるが勝る田中輝登選手が優勝。

GIBBON CUP大阪大会/開幕戦の実行委員長であり父・田中健雄の前で、

優勝が期待されるプレッシャーの中でしっかりと勝ち切った田中輝登選手。

素晴らしい名勝負と人間ドラマを生んで幕引きとなった大阪大会。

来年も2年連続で大阪大会開催を実現してほしいと願っている。


GIBBON CUP 2019 開幕戦 in グランフロント大阪 うめきた広場/大会結果

【オープン男子】

優勝 田中 輝登

準優勝 木下 晴稀

3位 菊川 信

4位 石田 創真


【オープン女子】

優勝 須藤 美青

準優勝 岡田 亜佑美

3位 渕上 万緒

4位 佐々木 燈


【マスタークラス】*36歳位以上

優勝 我妻 吉信

準優勝 太田 朋史

3位 竹中 一朗

3位 波多野 雄哉


【ジュニア男子】

優勝 中村 陸人

準優勝 大戸 元気

3位 大沼 颯仁

3位 大沼 宙樹


【ジュニア女子】

優勝 岡澤 恋

準優勝 渡辺 莉央

3位 太田 はな乃

3位 大嶋 暁子


ギボン特別賞 石田 創真      

UE特別賞 菊川 信

くいまる特別賞 太田 朋史

GO&FUN特別賞 細江 樹

GO&FUN特別賞 西 和子

特別賞(アオアヲナルトリゾートペア宿泊券) 竹中 一朗

特別賞

清田 凛空

中村 拓志

桑原 未来

田口 三華

山本 紗衣

山本 瑞季

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